久々に小説 「インサイドジョブ」

最近更新して無かったなぁと思って。
キノコの方は少しずつ進んでますが、今回は別の作品を載せようかと思います。例によって書きかけです。
もしかすると販売の方に載るかも分かりません。分かりませんが、仮にそうなったとしても来年のことなのでその時考えます。
では、取り敢えず載せます




インサイドジョブ


頭に沸き上がるのです、如何しようも無く叫べとて音には為ら無いのです、如何したって私は満たされず伽藍堂な侭に広がるのです、貴方に好きな人は居るでしょうか、心に憑いて離れない人は居るでしょうか、此処では貴方が肯定したと仮定します、貴方は其の人を見て癒されるでしょうか、其の人に依存しているでしょうか、其の人が死んだ時貴方は後を追いますか、私は知りたいのです、貴方のことを知りたいのです知りたいのです、私には解ろう筈も無いのです、私は居ないのです、少なくとも貴方の定義に於いて私は居ない存在なのです、故に知りたいのです、

私とは何だろう。それは実に曖昧で不確かなものに思える。私を動かすのが私なのか、動かされているのが私なのか。私はそもそもここにいるのか。


インサイドペイン

朝目が覚めた。酷く身体が重く、固まっている。顔を上げてしばらくしてから、自分が机に突っ伏していたことに気づいた。不安定な古い椅子に腰掛けた上でのこの体勢なのだから、寝心地が悪くて当たり前である。
そして目に入るのは自らの汚い文字。あァそういえば、私は今日まで、つまり月曜日までの課題をやっていたのだ。さっぱり進んではいないが確かそうだった。つまり今日も間に合わなかったのだ。思った通りにあと15ページ程残っている。学校になんて行きたくない…。
「ご飯出来たから降りておいでー」
母親の声に渋々と着替え始める。少し掛かる、と返してから私は机の上をもう一度見た。見慣れないノートが置いてある。どこにでも売っている、ごく普通の大学ノートといっていいだろう。何気無く開いてみると、そこには既に文字が書かれていた。私よりも遙かに綺麗な整った字で、ノートの最初のページを埋めていた。

頭に沸き上がるのです、如何しようも無く叫べとて音には為ら無いのです、如何したって私は満たされず伽藍堂な侭に広がるのです、…

とうとうと綴られている。誰に向けて書かれたのか、そもそも誰に向ける気もないのかよく分からない、と思っていたら、意外にも相手を意識した文が始まった。

貴方に好きな人は居るでしょうか、心に憑いて離れない人は居るでしょうか、此処では貴方が肯定したと仮定します、貴方は其の人を見て癒されるでしょうか、其の人に依存しているでしょうか、其の人が死んだ時貴方は後を追いますか、…

私、なのだろうか。ここに置いてある、この部屋のこの机に置いてある以上、これは私に向けてのものだと考えるのが妥当なのだろうか。いきなりコイバナかよ、と笑い飛ばすことの出来ない切迫感がそこにはあった。しかしよくわからない。私に向けてのものだとして、何故私なのか。

私は知りたいのです、貴方のことを知りたいのです知りたいのです、私には解ろう筈も無いのです、私は居ないのです、少なくとも貴方の定義に於いて私は居ない存在なのです、故に知りたいのです、

何故、私なのか。
さっぱり分からず、私は着替えを再開することにした。母親は私を待っているだろう、朝から私がもたもたとしているのにイライラしているに違いない。ノートを閉じて、外を眺めて。雨はしとしとと降り、黒い雲は朝日をしっかりと隠していた。私はカーテンを閉じて、階段を降りた。母親は昼食の用意をしているようだった。食卓にはご飯と味噌汁と焼きそばが並んでいた。いつもの通り、昨日の残り物だ。
いや、昨日焼きそばなんて出ていただろうか。確かロールキャベツだった気もするが。まあ私が忘れているだけだろう。ロールキャベツは父親が食べたのかもしれない。ともあれ、私は焼きそばに箸をつけた。といっても、朝は食欲があまり無いので、ご飯二口、味噌汁一口、おかず一口が精一杯だ。そもそも食べない時だってある。折角用意して貰っているのに申し訳ないという気持ちは山々だが、無理に食べるのも失礼だ。
どうも学校に行きたくなくて、二階に上がった。時間的に少しは余裕があるが、そろそろいつも出発している時間だ。半ば思ったとおりに、母は階段を登ってきた。
「悠希?もう学校行く時間じゃないの?」
行きたくない。あんな場所行きたくない。私が何かすると笑い声がする。無論好意的なものとは死んでも言えない。悪意のこもった嘲笑というのが一番正しいだろうか、いやまだ足りない気がする。あんなところに行くぐらいなら、家でパソコンだとかゲーム機だとかを弄ってた方がいいだろう。
「遅れるよー?」
行きたくないのだから放っておいて欲しい。私はあの場所に相応しくない。あんなところで人の悪意をすり抜けながら生きていく術を私は知らない。奴らが全員いなくなって、空っぽになった施設になら行ってもいいけれど、きっと奴らは私よりずっと長生きするのだ。
「今日体調悪い。行きたくない」
「あんたはそんなこと言ってまた仮病なんでしょう?さっさと下に降りて来なさい」
「頭痛と吐き気と腹痛がする」
「全く、昨日はすんなり学校に行ったのに…」
…昨日?
昨日は日曜日だった。母は金曜日を言い間違えたのだろうか。そんな訳はない。金曜日は私は今日のようにギリギリまで渋っていたはずだ。日曜日に学校が無いのは周知の通り、ならば何故母はそんなことを言うのか。私の思い違い?まさか。月曜日と火曜日を間違える程私は馬鹿じゃない。
「お母さん、昨日、ってどういうこと?」
「どういうこともなにも、昨日珍しく笑顔で学校行ったじゃない。いつもより元気だったし、なんか良いことあったのかなーと思ったらすぐこれなんだから。もう少し自分の感情をコントロールしたらどうなの?」
この人は何を言っているのだろうか。
私は昨日学校に行ってない、と言おうとしてやめた。どうせ言っても意味のないことだろう。いつでも私は間違っていて、皆は正しいから、私の定規で世界を見てはいけないんだ。
もう私なんて要らないんじゃなかろうか。
「ほら、電車遅れるよ。行きなさい」
「…はい」
考えてみれば母にこれ以上迷惑をかけてはいけない。ここでずっと喋っているのも私には勿体無いくらいの労力だろう。早く出かけないといけない。
鞄を引っつかんでから、机に昨日やっていた課題が無いことに気づいた。それから例のノートの位置が変わっている気もした。少し悩んでから、私はそのノートを鞄に入れた。
外は何故か明るく、カーテンを開けると雲の切れ間から光が差し込んでいた。








とまぁ、こんな感じ。
まだ少し書き足す予定だけど、案外内容的にはこれぐらいで終わらせといた方がいいのかもしれない。
いずれにしろ、修正はしようと思います。