冷却幽霊 第一話

死んだら忙しくなりました。



いやマジで。



事件が起こったのは夏休みのことであった。いつものようにほんわかと歩いていただけだった。そう、大抵の人には分かると思うが、私は轢き逃げられた。ずるずると引き摺り回されたもので、服の破れが半端じゃなかったことを覚えている。あと、痛くて吐き気がしていた。まあ、一生で一回味わえるか味わえないかの体験だ、相当のプレミアものではある。
まあとにかく、その時に私は死んだ。幽体離脱までしてしまった。後悔が無いと言えば嘘になるけど、ここまで生きられた時点でラッキーだと思う。いつ轢かれてもおかしくない生き方をしていた。眠りこけたまま赤信号渡りかけたり、おにぎり食べながら歩いたり。車って怖いなー、とか死んでから言っても無意味な気がするけど。
『あー、死んだ死んだ』
その時は全然実感なんて無かったけど、思わず声に出していた。すると目の前に人魂のようなものが現れたのだ。
『…死んだか』
そう言ってくるので、曖昧に返すことにした。
『はい、一応そういうことでしょうね』
『早速頼みたいことがあってだな』
私は何も考えずに承諾したけど、今考えるとそれで正解だった。死んだ後の暇潰しなんてそうそう無い。
『世界を少々救ってほしい』
『了解っす』
この時は、何も知っていなくて。
ただ流れに身を任せ。
ぼんやり気味の私はぼんやりと流されていった。



桐原 絶厦(キリハラ タツカ)、15歳、女。
中学三年生の夏休みに死亡。
轢き逃げ事件の被害者であり、犯人は未だ見つかっていない−−−−




そして今。
私は"仕事"が好きです。
これは、少し妙な幽霊の話。