第4話

私は、暇だ。
何故かというと、することが無いからだ。
私のパートナー、仕事相手である瀬田は普通に学校に行っている。平日の昼間とか超絶に暇。助けてエイリーク!な日常である。
さて何をしようか、と考えて、未だ服を着替えていなかったことに気付いた。大変由々しき事態だ。血まみれセーラー服なんて一部のコアなファン位しか喜ばないだろう。つーかリアルでいたらまずは引く。そんなもんだ。
とにかく、服を買わないと。お金はそんなにないけど、今のお財布事情なら『これぞ☆幽霊コスチューム!』が買えたはず。丁度いい、死んでからでないと着れないものを着るべきだろう。
わりと投げやりな白い和服を、私は買いに行った。


無事帰宅。
変な幽霊に言いがかりをつけられることがたまにあるが、今回は平和であった。
着るのはそこそこ簡単で、注意するのは左前にすること。普通の人はなかなかしない注意だ。
『……ふむ』
安いわりに着心地がいい。白さも、いい感じに幽霊っぽい。
ただ、評価してくれる人がいないのが寂し過ぎる。
独りぼっちなのだ。瀬田の性格は大概だが、それでもいた方がいい。畜生…友達が欲しい。通販で送ってくれりゃいいのに。
『友達が欲しいよー!!』
誰にも聞こえないことをいいことに、私は叫んだ。誰も聞いちゃいない。当たり前のことがとても悲しい。駄目じゃないか幽霊、気が効かないな。
『…………はー』
一人でふざけるのも虚しくなってきた。だがまあ、仕方ないだろう。元々ものをスッパリと割りきれる性格ではない。死んだことは割りきれても、寂しさは割りきれない。
『………よし』
考えた末に、瀬田の学校に顔を出すことにした。実は、私の中学と瀬田の中学はわりと近いところにあるのだ。
ふわふわと漂いながら、私は楠木東中学校へと向かった。



……睨まれた。
何も睨むことないだろ?言っとくけど、私は他の人には見えないんだぞ?普通、変な人に思われるだろ。
けど、睨み返すのもなんかつまらないと思って笑顔を返してみた。ラブ・アンド・ピース☆って感じの。
……もっと睨まれた。
思わず不満そうな表情を向けてから、瀬田の隣の男子に気づいた。彼は瀬田に話しかける。
「…おい、久遠。………また、アレか?」
「ああ。さっさと成仏すりゃいいのに……」
しなくて悪かったな。
と言うか、クラスメイト公認なの?『僕、幽霊見えちゃうんですっ☆』ていう宣言でもしたの?…瀬田はしないな、絶対。ただ単にばれただけだろう。
『全く、女の子がくっついてるこの状況を嬉しく思わないのかねー…ひょっとして、あんた、ホモなんでは?』
「……………………」
しねしねこうせんだ!
しねしねこうせんが目から出てる!
瀬田ってすげえ!
隣のお友達もドン引きだよ、良かったねっ!
「せ、瀬田…………大丈夫か?」
「……ああ」
きっと今のは、家に帰れというアピール…いや、攻撃なのだろう。ならば私は、
『帰らないぜ!!』
ドヤァ!!!
幽霊であることをいいことに、瀬田の周りをふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわ……………………
ははは!!
見ろ、“あの”瀬田がプチノイローゼだ!
ずっとイライラしてて、なんか顔色も悪い。そんなに私が嫌いか、傷付いたぞ。
嘘だけど。

とまあそんな感じで一日が終わろうとしていたときに、意外な人が現れた。
女の子だ。
ストレートで肩まで伸ばしたつやつやサラサラの髪。穏やかな笑顔。短すぎず長すぎないスカート丈。んで、可愛い。
そんな彼女が言ったのだ。
「一緒に帰りませんか?」
なんてこった!
陰険で暴力的で霊感アリな瀬田久遠に、嫁の来手があったとは!!
あろうことか、瀬田の嫁候補は“私に”笑いかけた。
「あ、初めまして。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
『……………え、ああ!!もちろん!私の名前は桐原絶厦。中三で死亡。えと、君は…?』
「三谷々露鳴(みやたに ろな)です、中学一年生です!」
露鳴ちゃんは向日葵的な笑顔を見せた。



おまけ(絶厦さん)




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