冷却幽霊 第二話

人魂の名は御影(みかげ)といった。ちなみに、厳密に言うと人魂ではないらしい。ならば何なのかと聞くと、曖昧な言葉が返ってきた。よく分からないが御影は御影だという。
『御影、ちょっと聞いていいかな』
『…何だ』
『世界ってどうやって救うの?』
戦うのか、何か封印を解いたりするのか、冒険するのか…きっと、そんな感じだろう。
『今からお前は人間と友達になる』
『………え?』
意味が分からなかったが、この日から私の"仕事"は始まった。
その後直ちにとある人間の家の中に飛ばされたのだ。彼との出会いに特別なことは無かったが、今でも思い出せる。逆に生きていた頃の記憶は随分薄れた。その事は確かに寂しいが、ある意味仕方のないことだとも思う。
私の居場所は此処だから。



投げ飛ばされたことによる鈍い痛みが、体中を襲っていた。それに眉をひそめつつ、周囲の確認。
ここは部屋で、大いに散らかっている。男子学生の一人部屋という印象である。事実、中学校の教科書も床に散乱している。
『…あー』
いていい所なんだろうか。悩む間もなく部屋の主はやって来てしまった。
『…………』
何を言えばいいのか。逃げるにしても私って足遅いしな…。
幸いにも、向こうが助け舟を出してくれた。
「………どちら様?」
しかし、怖い。何がというと背の高さとか目の鋭さとか声の冷たさとか色々が。
『私は』
言いかけて、止まった。これってどう言えばいいんだろう。幽霊?それとも本名をそのまま言うとか?
「だから誰なんだよ…」
『誰なんだろう…』
思わず声に出していたらしい、ますます怪しまれた。怪しさMAXなんてものじゃないだろう。
「質問したのは俺だ」
『ですよね』
はは、と笑う私そして何気なく身だしなみを整えようとして気づいた。
『…あ』
服が死んだときのままだった、ということに。しかし幽霊が着替えられるのかどうかもよく分からないので、一先ず保留にしておく。
『私は桐原絶厦です。昨日うっかり死んだので、今は幽霊ですけど』
「俺は瀬田久遠(せたくどう)、中学二年生」
なんと二年とは。年下と友達にならないといけないのか。
一応こちらも年齢を告げることにした。
『私は中三。よろしく』
それを聞くと瀬田は意外そうな顔をする。
「年下だと思ってた」
『…殴っていい?』
早くも相手の性格が分かった。生意気な餓鬼である。
「沸点が低い辺り、子供っぽいな」
『んだと表に出ろや!!』
込み上げる破壊衝動、ターゲットは勿論目の前のこいつ。殴っていいよな、むかつくし。

…結果。全部かわされました。